[本を読む]
諭吉は今も新しい
驚いた。知らなかったよ、福沢諭吉がこんなに新しいなんて。
この本は諭吉が日本をどんな社会にしようと考えていたのかがテーマ。ぼくが特にグッときたのは2点あって、1点目は儒学との関係。2点目は男女関係について。
まず、儒学との関係について。諭吉は西洋の社会や考え方を日本に持ち込もうとした人、となんとなくぼくは思っていた。でもベースにあったのは儒学。儒学だの儒教だのというと、親孝行をしろとか、年上の人を敬えとか、古くさいイメージがある。でも、そうじゃなくて、聖人の教えを学んで聖人君子になることをめざすのが儒学なんだ。
儒学の本家本元の中国の社会は、儒学を勉強して
さて2点目の男女関係。諭吉は「家」を大事にした。でもそれは封建的な家制度の「家」ではなく、いまのぼくらの感覚でいう家族だ。諭吉の考えた女性は、無力で無権力で男性に従属した存在ではなく、男性と対等に家族を構成する人。そのためには、女性に責任を与え、女性に財産の権利を保障すべきだと諭吉は考えた。
びっくりしたのは結婚したときの姓について。結婚したら新たに家族を創立し、新しい家族の苗字は男女それぞれの苗字から1字ずつ採って新しい苗字を作ればいいじゃないかというのだ。21世紀にもなって選択的夫婦別姓制度にすら反対している“保守派”の皆さんを諭吉が見たら呆れるでしょうね。
永江 朗
ながえ・あきら●書評家