[連載]
第6回カバーアーティスト
白川桃太郎さん
扉や本に見えなくても
問題ありません
「春」と「青春と読書」。
この二つから連想したのが、「新しい出会い」でした。
次に、新しい出会いは、「扉」を開けた先にあるだろうと。扉といえば、“雑誌の表紙=扉”にも意味が重なります。
「扉」をコンセプトにしようと決めると同時に、「読書」も表現したいと考えました。本もまた、新しい出会いをもたらす未知の世界への扉だからです。そうしたアイデアから最終的に、本の背が、扉にも見えるような表紙デザインが生まれました。
扉には、日本語、英語、フランス語(porte)、イタリア語(porta)、ドイツ語(tür)で、「扉」を書き加えました。
僕はデザインする対象の言葉を種に、デザインを膨らませていくことがよくあります。言葉とデザインは切り離せないものだと考えているからです。表紙のコンセプトが扉ではなく、たとえば箱だったら、全く異なるデザインになっていたはずです。
と、ここまで説明してきましたが、表紙の作品が扉や本に見えなくても全く問題ありません。見る人には自由に想像を膨らませてもらえたら嬉しい。それこそが抽象度の高いグラフィックデザインの良さであり、強みだと思うからです。
制作者である自身の意図やコンセプトを込めながらも、見た人が、自ら解釈したり、積極的に何かを感じ取ったりするような表現こそが面白い。僕は人を能動的に動かすような作品を作りたいと思っています。
聞き手・構成=砂田明子/撮影=木内章浩
<藝大生に聞く!Q&A>
Q 好きな本
『人間の建設』(小林秀雄、岡潔 著)、『新しい分かり方』(佐藤雅彦 著)
Q 興味のあること
美術史の観点から見た現代のデザイン
Q 憧れのアーティスト
佐藤雅彦、ゲルハルト・リヒター
Q 東京藝大はどんな大学か
自立した人が集まった場所
Q 今後の展望
興味の赴くまま制作していきたいです
白川桃太郎
しらかわ・ももたろう
2002年生まれ。福岡県出身。東京藝術大学美術学部デザイン科2年。
Instagram/@mmtr_umnc