[受賞記念エッセイ]
令和のお江戸で、我拶 もんに出逢う
神尾水無子
数年前、神保町の神田古本まつりにて。
深川江戸資料館からの帰り道にて。
贔屓にしている
大好きな演目『芝居の喧嘩』。旗本・
自宅の作業部屋にて。
わたしは歴史について専門的に学んだことはない。小説講座の先生から「あなたは時代ものを書いたら」と勧められ、慌てて書店に走った。手にしたのは中学生向けの江戸時代の図鑑。それから少しずつ、小難しい本を読むようになり、それらしきものを書き始めた。
編集者兼ライター時代の習い性か、ものを調べる作業は楽しかった。その後、何年も結果を出せず、何本も日の当たらない拙作を書き散らかすとは夢にも思わず。けれど今、信じられない栄誉を授かった。
小説すばる新人賞に向けて日々、努力されている皆さまへ。
こんな作者でも受賞できるんだな、と少しでも励みになれば幸いです。
撮影=藤澤由加
神尾水無子
かみお・みなこ●1969年東京都生まれ