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問いが導く少女の変貌
呪術や魔術といった道具立てを用い、少年少女の自己肯定感の獲得をめぐる模索を描いてきた佐藤さくら。本作の主人公、高校三年生の
そんな凪は、校外活動の最中に湖に転落してしまう。気付くと鎖でつながれ、鉱山で働かされていた。しかも左腕と両足が獣のような姿形になっている。ここはどこなのか。自分はどうなってしまったのか。
凪を救い出してくれたのは、十二歳の少年サージェ。彼はこの国、サライの仕組みを凪に話す。足元の地面は海の上に立つ「
サージェは現在の王に会うため、西の果てにある都を目指していた。都には凪のような、人間と獣の「まじりもの」のことをよく知る「
「王柱」という言葉は「
この問いに、どんな世界も誰かの犠牲の上に成り立っているという真実を重ね合わせて物語は進んでゆく。サライの王・ティルハの慈悲深さと気高さが、ナギやサージェに新たな視点を与える展開は感動的だ。ラスト近く、海からあるものが出現する場面は、彼らの葛藤が丁寧に描かれてきたからこそ美しく映る。
ナギは「凪」に戻れるのか。戻るのか。主人公は大概、時間の経過と共に成長するけれど、彼女の成長は変貌と言ってもいい。その姿を是非見届けてください。
北村浩子
きたむら・ひろこ●フリーアナウンサー、ライター