[本を読む]
人生の闇を払う清々しい光
「よろず相談屋繁盛記」から「めおと相談屋奮闘記」、そして今度は「おやこ相談屋雑記帳」。野口卓の人気シリーズが、ついに第三シーズンに突入した。主人公の
というのがシリーズの基本設定だ。不思議な魅力を持つ信吾の周囲に、しだいに人々が集まって出来た、温かな空間がたまらなく気持ちがいい。そして楽器商の娘の
作者は人生の達人であり、世の中に光と闇があることを熟知している。本シリーズは、主に人間の明るい面を取り上げているが、ときに闇を見つめることもある。「めおと相談屋奮闘記」シリーズ最終巻の、予想外の悲劇を読めば、作者の厳しさがよく分かるだろう。だが同時に、波乃の妊娠という新しい光により、闇を払うのだ。だから第三シーズンの始まりを告げる本書は、光に溢れている。将棋会所のレギュラー陣が猫の話で盛り上がる「猫は招く」や、相談者が信吾と話しているうちに自分の道を見つける「山に帰る」、信吾が子供時代から知る女性の人生を鮮やかに捉えた「サトの話」など、どれも妙味がある。
もちろん明るい話だけでなく信吾の相談屋という仕事が、意外なマイナスの影響を与える「同志たれ」のような話もある。だが、それも人生。ラストの「出世払い」まで読んで、心が
細谷正充
ほそや・まさみつ●文芸評論家