青春と読書 本の数だけ、人生がある。 ─集英社の読書情報誌青春と読書 本の数だけ、人生がある。 ─集英社の読書情報誌

定期購読のお申し込みは こちら
年間12冊1,000円(税・送料込み)Webで簡単申し込み

ご希望の方に見本誌を1冊お届けします
※最新刊の見本は在庫がなくなり次第終了となります。ご了承ください。

本を読む/本文を読む

ゴジキ(@godziki_55)『戦略で読む高校野球』(集英社新書)
をお股ニキ(@omatacom)さんが読む
膨大なデータから高校野球のイメージを覆す

[本を読む]

膨大なデータから高校野球の
イメージを覆す

 この書評が出ている頃は、夏の甲子園に向けた都道府県大会の真最中であろう。高校球児たちが夢に向かって泥まみれになり、ひたむきにプレーする姿は、全国の高校野球ファンの心を惹きつけている。
 WBCで史上最多の三度目の世界一に輝き、日本中を興奮の渦に巻き込んださむらいジャパンの選手たちも、かつては甲子園を目指していた。負けたら終わりのトーナメント制や、全員で勝ちを取りに行く姿勢は、高校野球によって養われたものであろう。つまり、高校野球は、日本野球のルーツの一つであり、日本野球文化の象徴なのである。
 しかし、高校野球の「勝利」にこだわる文化には、負のイメージもつきまとっている。過度な投げ込みや走り込み、暴力的な指導や体罰、一人のエースによる完投主義、選手の個性を無視したバント主体のスモールベースボールなど、挙げたらきりがない。もっとも、それらの指導や戦術は、すでにアップデートされている。
 そうしたことを明らかにしたのが『戦略で読む高校野球』だ。著者である野球著述家のゴジキ氏は、日本でもまれに見る高校野球マニアである。二〇〇〇年以降、高校野球界を席巻した強豪校の試合運びやメンバー、戦略、投手起用、ユーティリティ選手の重要性などをこれほどまでに詳細に網羅的にまとめた一冊はなかなかない。
 本書の分析によると現代の強豪校は、選手個々人がデータを用いて自主的に練習することでレベルアップし、それを監督たちがまとめあげチームの能力を最大化し、その個性に最適化した戦略を基に勝利に結びつける。今の高校野球は、本来の意味で「勝利にこだわる野球」の素晴らしさを体現したものと言えるのである。
 本当の勝利至上主義とは何かを膨大な事例から浮かび上がらせる本書は、ファンだけでなく高校野球関係者、指導者にも参考になる一冊だろう。

お股ニキ(@omatacom)

おまた・にき●野球評論家、野球アドバイザー

『戦略で読む高校野球』

ゴジキ(@godziki_55) 著

発売中・集英社新書

定価 1,100円(税込)

購入する

TOPページへ戻る