[本を読む]
膨大なデータから高校野球の
イメージを覆す
この書評が出ている頃は、夏の甲子園に向けた都道府県大会の真最中であろう。高校球児たちが夢に向かって泥まみれになり、ひたむきにプレーする姿は、全国の高校野球ファンの心を惹きつけている。
WBCで史上最多の三度目の世界一に輝き、日本中を興奮の渦に巻き込んだ
しかし、高校野球の「勝利」にこだわる文化には、負のイメージもつきまとっている。過度な投げ込みや走り込み、暴力的な指導や体罰、一人のエースによる完投主義、選手の個性を無視したバント主体のスモールベースボールなど、挙げたらきりがない。もっとも、それらの指導や戦術は、すでにアップデートされている。
そうしたことを明らかにしたのが『戦略で読む高校野球』だ。著者である野球著述家のゴジキ氏は、日本でも
本書の分析によると現代の強豪校は、選手個々人がデータを用いて自主的に練習することでレベルアップし、それを監督たちがまとめあげチームの能力を最大化し、その個性に最適化した戦略を基に勝利に結びつける。今の高校野球は、本来の意味で「勝利にこだわる野球」の素晴らしさを体現したものと言えるのである。
本当の勝利至上主義とは何かを膨大な事例から浮かび上がらせる本書は、ファンだけでなく高校野球関係者、指導者にも参考になる一冊だろう。
お股ニキ(@omatacom)
おまた・にき●野球評論家、野球アドバイザー