[本を読む]
日本のポピュラー音楽に耳を澄ます
パリに住んでいた頃、Japan Expoという日本のポップ文化を紹介する見本市の手伝いをすることが度々あった。そこで薄々気がついたことは、日本のマンガやアニメを
フランスにおけるマンガやアニメにせよ、日本におけるシャンソンにせよ、同じ「グローカル化」の産物ということになるだろうか。円盤や書籍としてパッケージ化された文化は、商品として輸出され、消費される。しかしながらそのような文化的財を取り巻く言説は、輸出先の国・地域のメディア環境や既存の他ジャンルとの関係性のなかで生み出される。そうしたローカルな言説空間における影響力の布置は、輸出元の国・地域のそれとは一致しないことがほとんどだ。
その意味で本書は、フランスと日本の比較メディア史としてこそ読まれるべきだろう。また、日本のシャンソンにおける銀座の位置付けや、日劇やヤマハホールなどの「大劇場シャンソン」と
安田昌弘
やすだ・まさひろ●京都精華大学教授