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第166回直木賞受賞『塞王の楯』
今村翔吾さんに聞く

[談話]

第166回直木賞受賞
今村翔吾『塞王の楯』

 今村翔吾さんの『塞王さいおうたて』(集英社刊)が第166回直木賞を受賞されました。戦国末期の大津城を舞台に、石垣をつくる技能集団・穴太あのう衆と鉄砲職人の集団・国友くにとも衆が「最強の楯」と「至高のほこ」という互いの矜持を懸けて対決する独創的な戦国小説で、同賞選考委員の浅田次郎氏も「極めて作品の熱量が高く、力強い小説」と評されています。受賞後怒濤の一週間を過ごされた今村さんにお話を伺いました。

 直木賞はこれまで二度の候補に挙がり今回は三度目。前二回と違って、今回の『塞王の楯』の売れ行きは徐々に加速を増し、賞の発表直前にピークに達する動きを見せた。それを知ったとき、「いくんちゃうか」と思ったそうだ。
 デビュー五年足らずにして念願の賞を射止めて、「もう、夏と冬の季節に電話待たんでいいんや、とめちゃくちゃ気が楽になった」し、何より賞を獲った瞬間に文体が変わったという。「たとえば、それまでは『知盛とももりには言いたいことがある』と書いていたのが、『知盛には言いたいことが、ある』と、途中に読点をつけるようになった。これは一例ですけど、本来自分はこうしたいと思っていた文体なり句読点の打ち方なりに、挑戦することができるようになったんですね」。
「受賞が決まってから小説が急にうまくなった気がする。これは直木賞効果ですね。まだまだいけるぞ、伸びるぞ、と。少し仕事を減らした方がいいという声もありますが、今やっておかないと後悔すると思う。今が人生で最大のチャンスというか、とにかくいろいろなことをやってもう一段階さらにつきぬけたい。それに、過去の直木賞作家の方々と同じ土俵に上がる資格が得られたわけで、すごい人たちと戦えるのは怖くもありますが、ワクワクするような楽しみもある」と。
 四十五歳くらいまではこのスピードで駆け抜けて、他の作家たちと一緒になって、かつて司馬遼太郎さんたちが築いた歴史・時代小説の活況を取り戻したいという今村さん。その先頭に立って旗を振る今村さんの姿が鮮やかに浮かぶ。

今村翔吾

いまむら・しょうご●作家。
1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(歴史時代作家クラブ賞・文庫書き下ろし新人賞)でデビュー。著書に『童の神』(角川春樹小説賞)『八本目の槍』(吉川英治文学新人賞)『じんかん』(山田風太郎賞)、「羽州ぼろ鳶組」シリーズ(吉川英治文庫賞)、「くらまし屋稼業」シリーズ等多数。

塞王さいおうたて

今村翔吾 著

発売中・単行本

定価 2,200円(税込)

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