[本を読む]
「長寿命」には尽くされない
価値と倫理を
物事に対する私たちの捉え方を一定の(しかし
本書で取り上げられている「血液サラサラ」や「狩猟採集民の生活(と現代人の生活のギャップ)」などは、ウィトゲンシュタインの言う「像」の
本書は、私たちが統計学的人間観を内面化させてゆく次第を丁寧に跡づけたうえで、ある極めて重要な論点を指摘する。この人間観は、「自分らしさ」という価値を支え奉じる個人主義的人間観と相反するかのように見えながら、実は裏で結託している、というのである。どちらの人間観も、一個の身体に閉じ込められた可算的な存在として一人ひとりの人間を捉え、かつ、誰にでも等速で流れるものとして時間を捉えることで、「生物的な命の存続こそが何よりも素晴らしい」という倫理を形成・強化している。そして、私たちの社会や生活に
本書の著者は、この現状を全否定するわけではないし、「自分らしさ」の探求を冷笑したりもしない。代わりに、先の二種類のものとは別の人間観を提示する。それは、
古田徹也
ふるた・てつや●哲学・倫理学者、東京大学文学部准教授