[本を読む]
アイドルとアーティストの間を突き進む
唯一無二の存在
本作は、パフィーの向かって右の方、亜美ちゃんこと大貫亜美さんのエッセイ本だ。一人娘の「
中でもさくらももこさんが亡くなった時の文章が印象的だ。一般読者でさえショックだったのだから、面識があった人間にとっては筆舌に尽くしがたいものがあるだろう。しかし、「今言葉にしておくべき」だと、さくらさんとの出逢いから別れまでが綴られていく。
初対面の時は連絡先を聞くことすらできなかった亜美ちゃんが、念願叶って再会するや、アニメのエンディング曲を歌わないかとオファーされる。もちろん答えはイエスだ。「『よかった~! パフィーだったらポンポコリンみたいなバカな感じわかってくれると思ってたんだ~! 嬉しい~!』と言って一緒にバカらしいものを作るという小2の夏休みの宿題みたいな約束をした」……大好きな人とバカがやれるなんて最高だ。しかし、だからこそ、別れが重くのしかかる。「そうなのだ。わたしもももちゃんも一児の母なのだ」「もちろん事実は受け止めるし、何なら親しい人の死は経験値が高いほうなので慣れっこなはずだった。でも無性に嫌だった」……お互いクリエイターであり母であるからこその思い。あの頃、たくさんメディアの報道が出たけれど、こんな風にさくらさんのことを書いた人はいなかったのではないか。
この他にも、亜美ちゃんだからこその率直で地に足のついた言葉にいっぱい触れられる。ところで、パフィーを見るといまだに「亜美ちゃん&由美ちゃん」と呼んでしまう。アラフィフだろうが関係ない。アイドルとアーティストの間を突き進む唯一無二の存在だもの。リスペクトを込めて、永遠にちゃん付けで呼ばせてほしい。
トミヤマユキコ
とみやま・ゆきこ●ライター、マンガ研究者、大学講師