青春と読書 本の数だけ、人生がある。 ─集英社の読書情報誌青春と読書 本の数だけ、人生がある。 ─集英社の読書情報誌

定期購読のお申し込みは こちら
年間12冊1,000円(税・送料込み)Webで簡単申し込み

ご希望の方に見本誌を1冊お届けします
※最新刊の見本は在庫がなくなり次第終了となります。ご了承ください。

インタビュー/本文を読む

表紙のウラばなし 中村一般

[インタビュー]

表紙・漫画連載にあたって

今号より、456(Shigoro)さんに代わって中村一般さんが表紙絵を担当してくださることになりました。中村さんは主に雑誌のカットやCDジャケットなどを手がけ、その細密な描写で注目を集めている新進のイラストレーター。また、レポートと漫画を融合させた「レポ漫画」の描き手としても活躍されています。本誌でも、表紙絵と巻末の「表紙のウラばなし」というイラストと漫画の二刀流で、その感性を存分に発揮していただきます。連載開始に当たって、中村さんにお話を伺いました。

聞き手・構成=増子信一

 中村さんが絵を描くようになったのは、幼稚園の頃にお絵描き教室に通い始め、「そこで私が描いた絵を先生に見せるといつも褒めてもらえたので、絵を描くって楽しいなと思った」のがきっかけ。
 中村さんはもともと団体行動が苦手で、小学校の通知表には「夢中になると周りのことが見えなくなる」と書かれていた。中学・高校時代も一人で絵を描いたり本を読んだりするのが好きだったという。好きな道に進むべく美術系の高校・大学に進んだが、大学の「キャリア支援講座」という授業で、就活にはコミュニケーション能力が重視されると教わり、自分の性格では会社員になるのが難しい、だったら好きな絵を描いて稼げるようになるしかないと思ったそうだ。
 そして十九歳のときにニューヨークへ短期留学をする。「たまたま路上で絵を売ることになって、運良く自分の絵が売れたんです。ただ、絵を商売にしていくのは大変だな、ちょっと気合を入れてやろうって、そのとき強く思った記憶があります」。
 風景の中に細々としたものを描き込んでいく密度の高い絵の一方で、シンプルな四コマ漫画も描いている。「描き込み系の絵や漫画はすごく時間がかかるのですが、四コマ漫画のほうは作業が少なくて済むので、自分の思っていることを早く出したいと思っているときは四コマを描いて、レポ漫画のように風景をちゃんと描きたいと思ったものは時間をかけて描き込みます」。
 雑誌の表紙を手がけるのは初めてという中村さん。どういう絵を描いていこうと思っているのか。「まず第一に、ぱっと見て、いいなって思って手に取ってもらえるような絵を描きたいですね。それから、これまでは自分が見た風景をそのまま描いていたところがあったのですが、“読書”というのをテーマに、少しファンタジーの要素を入れた面白くて、楽しんでもらえるような絵を描きたいと思っています。この四月号は馬をメインに描いていますが、あれは馬の肉=桜肉という、ちょっとした言葉遊びなんです(笑)。毎号、季節感に合わせてメインの動物を変えていきたいなと思っています」。
 巻末の漫画「表紙のウラばなし」は、「絵を描くときに、自分で撮影した風景を参考にして描いているんですけれども、その撮影したときのこととか、何をしにそこへ行ったのかとか、その風景のどこが好きなのかとか、そういう実際に自分が経験したことをうまく伝えられるように描きたいですね」。
 好きな作家は? と訊くと、「文章で、人の魂を、人の心を救済してくれるような気がする、吉本ばななさん、村田沙耶香さん、こだまさん」という三人の作家の名前が挙がった。この作家の好みからも中村さんの感性の源が窺われる。
「一般」というペンネームには、これまでの普通以下の存在から一般人になりたいという意味合いと、「もし絵で自分の想像を超える評価をいただいたときに天狗にならないよう、自分はただの一般人だぞ」といういましめの意味も込められているという。謙虚さの中に強い力を秘めている中村さんが、本誌でどんな絵を描いていってくれるのか、楽しみ。


  • 「ダックスフンドを探せ(東京)」(2019)

  • 「ペット可のアパート」(2020)

なかむら・いっぱん●イラストレーター、漫画家。

1995年生まれ。小説誌、雑誌、CDジャケットのイラストや、「ジモコロ」「みんなのごはん」等でのweb漫画で活躍中。2018年、Twitterにてイラストシリーズ「#ダックスフンドを探せ」が話題に。21年、広末涼子×竹内まりやコラボ曲「キミの笑顔」のミュージックビデオでイラストを担当した。

TOPページへ戻る