[本を読む]
真実が明らかになるラストが圧巻
『雪の鉄樹』を思い出す。あの息苦しい物語を思い出す。何なんだこれは、とびっくりして、あわてて遠田潤子の作品を遡って読みふけった日々を思い出す。
本書『紅蓮の雪』も、息苦しい物語だ。たとえば、若座長の
「俺は子供の頃から、人に触れるのが怖いんです。触れるのも触れられるのも、怖くてたまらないんです。人が近くに寄ってくるのも苦手です。息苦しくなるんです」
のちに伊吹はそう語るが、なぜなのかは語られない。幼いころに父親の体に触れようとしたら「汚い、触るな」と怒られた回想が挿入され、自分は汚いと思い込んで育ってきたという事情は少しずつ語られていくが、問題はなぜ父親がそんなことを言ったのかということだ。その肝心
双子の
北上次郎
きたがみ・じろう●文芸評論家