[本を読む]
終活未満、
「こうやってよ、焚き火をぼーっと眺めながら、シングルモルトをチビチビやって『あれ、じいちゃん寝ちゃったぞ。しょうがねえな、風邪ひくぞ』と周囲に言われながら、そのままー。みたいな死に方がいいよな。そしたらよ、ほっといてくれよな。朝になれば潮が満ちて身体を海に運んでくれる」
本書にも登場する
その時は誰もが冗談として受け止めていて、死体遺棄罪が成立するか否かと、ブラックな盛り上がり方をしたが、本書を
もともと「青春と読書」に連載していた「エンディングノートをめぐる旅」をまとめ加筆したものだが、そもそもエンディングノートや終活なんていう一種の
それでも自身の心身の変化を感じ、鬼籍に入る周囲の友人も増えてしまい、死生観という言葉を意識するようになったのは間違いない。その結果、椎名さんは別荘を処分し、でっかいピックアップトラックも手放し、奥様と自分たちの葬送について話し合うようになった。椎名さんなりの終活なのかもしれない。
ただ、その一方で、終活なんてものは整理整頓、立つ鳥跡を濁さずの言い換えに過ぎず、それをコンプリートすれば安らかな眠りが待っているわけでは決してない。本書にある「正体不明の不安定な気持ちは、死に向かって備えるもろもろの準備や心構えがちゃんとできていない不安感」を終活によって払拭できるかといえば分からない。あるいは死が身近になってしまい、恐怖が増すケースだってあるかもしれない。
結局、身辺整理をした上で、あるいはする過程で何を思い、考えるかなのだ。自身の道程を振り返り、終点にどう向かうのか。自分で決めるしかない。
安易に終活なんてものを
竹田聡一郎
たけだ・そういちろう●ライター・雑魚釣り隊ドレイ頭