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組織の持つ不条理
『検証捜査』に始まる堂場瞬一の「捜査」シリーズの最終編、『共謀捜査』が出た。もっとも、作者は一連の作品群を「シリーズ」ではなく『検証捜査』のスピンオフだと『共謀捜査』のあとがきで述べているのだけれども。
『検証捜査』は異色の警察小説だった。なにしろ警察庁が全国から刑事を集めてチームを組織し、ひそかに神奈川県警を捜査するというのである。集まったのは警視庁の
スピンオフ連作は1作ずつ完結していて、主人公も舞台も、そして題材となる犯罪の性質も異なる。『検証捜査』は神谷の視点で描かれたが、第2作『複合捜査』以降、5人の刑事たちが、主人公あるいは脇役として登場する。彼らは警視庁・道府県警の管轄を超えて協力する。単独で読んでも充分楽しめるが、品、とりわけ『検証捜査』を読んでおく他の作と面白さが何倍にも膨らむ。
前作となる第5作『凍結捜査』では、凜が冬の函館・大沼で起きた殺人事件に挑んだ。小説の最後で、警察庁のキャリアである永井が、自分はICPO(国際刑事警察機構)で新しいタスクフォースを立ち上げるから手伝わないか、と凜を誘う。そして『共謀捜査』はICPO本部のあるフランスが舞台。永井が何者かによって誘拐されるところから始まる。
事件はフランス国内に留まらない。日本国内でも事件が起き、永井誘拐との接点が暗示される。さらにはあの『検証捜査』の闇までが掘り返される。連作の最後にふさわしく、凜や神谷をはじめ桜内や皆川、そして定年退職した島村までが活躍する。まさにオールスター戦で、連作に親しんできたファンにはたまらない。
いずれの作品でも印象的なのは組織というものが持つ不条理。事件が解決しても苦さが残る。人間という存在の
永江朗
ながえ・あきら●書評家