[本を読む]
「母の着物が似合わない」から始まる
痛快謎解きノンフィクション
片野ゆかさんは第12回小学館ノンフィクション大賞を受賞した『愛犬王 平岩米吉伝』など、ペットや動物園の動物を描いたノンフィクション作家として知られている。
そんな片野さんの容姿をちょっと描写してみよう。顔は
そんな片野さんが年を重ね、それまで興味のなかったお母さんの遺品の着物を着てみた。――似合わない。じゃ、なぜ似合わないのか。ノンフィクション作家はフットワークが軽く「Yahoo!知恵袋」を皮切りに、着物の達人たちに鋭く切り込んでいく。無料の着付け教室ってどうなの? どんな着物が自分に似合うの? 自分で着るときの注意点は? なんでこんなにしきたりがいっぱいあるの?
私は五十代半ばで洋服が似合わなくなったことに気が付いた。気に入って買った洋服が家で着てみるとイマイチ、ってことが何度かあった。じゃ、着物を着てみるかと知人の結婚式に訪問着で行ったら、すごく評判が良かったのだ。通い詰めている文楽にも着物で行きたいと思い始めていたのでいいきっかけになった。
片野さんと同様に着付け教室は吟味した。結果、同じようなアンティーク着物を着付ける先生に師事して、私も基本補正はなし。
現代ではネットで検索すれば、着付けの情報はたくさん見つかる。私の場合、大きすぎる胸が悩みの種だったが、叶姉妹のブログで解決できた。彼女たちの着付けは独特だが、その道のプロの知恵が詰まっていたのだ。長年の悩みだった胸元がガフガフと緩むことがなくなった。
片野さんが楽しそうに着物を着ている姿を想像すると思わず笑みが浮かんでしまう。そんな仲間が増えたらいいと思う。
新型コロナ禍でSTAY HOMEの日々だけど、着物でどこかに出かけたい。片野さんと愛犬マドを誘ってお月見もいいかなあ。
東えりか
あづま・えりか● 書評家、書評サイト「HONZ」副代表