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岡田 育 『金木犀とメテオラ』 だん美緒 著

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「今」こそ読みたい少女小説

 北海道南斗なんと市に新設されたばかりの進学女子校を舞台にした物語である。ダブルヒロインの一人は宮田佳乃よしの。東京出身で、二歳からピアノの英才教育を受ける傍ら、都内の名門・桜蔭を受験して東大へ進む気まんまんだった。だが母の急死により、父親から寮のある中高一貫校へ行けと命ぜられ、不本意ながらも北海道へ飛ばされる。
 もう一人はおくさわかなえ。入学生総代と学級委員を務める特待生で、品行方正な美少女だが、貧しい母子家庭に育つ。母親の恋人からの気まぐれな資金援助なしには生活もままならず、奨学金をかき集めて地元を逃げ出すことだけを考えている。
 宮田を苦しめるのは死してなお夢枕に立って「完璧」を求めてくる母親の姿であり、バカにしていたド田舎の学校で成績首位を譲ろうとしない、くさいほど絵になる優等生、奥沢の存在だ。その奥沢をはずかし めるのは狭い世界で男に依存して生きる無学な母親の姿、そして、どれだけ「完璧」を装っても自分が偽物に過ぎないことを思い知らされる、都会育ちのお嬢様、宮田の存在だ。
 幼い頃から「東大のピアノ科」という実態のないゴールを漠然と目指していただけの宮田は、青春を謳歌する級友たちが次々と将来の夢を見つける中、自分だけ未来の解像度が極端に粗いことに愕然とする。痛ましいほどの焦燥が渦巻く十二歳の春と夏、そして二人が「奇跡」に気づく十七歳の秋が描かれる。
 読み終えて久しぶりに幼馴染に会いたくなった。長く短い十代の時間を同じ女子校で過ごした連中である。あの頃の我々は自分たちを何でも数値化して比較していた。どの家が裕福でどの家が貧乏、全国模試でA判定だったのは誰と誰。死ぬほどうらやましく憧れていたあの子、なぜだか嫉妬を買ってしまったあの子、長年会わずにいる顔を思い浮かべる。
『金木犀とメテオラ』は王道のライバルもの少女小説と言える。宮田や奥沢によく似ていた幼馴染たち、読んだらどんな感想を持つだろう。大人になった我々はもう、あんなふうに互いの優劣を競い合うことはない。あの頃、面と向かっては言えなかった胸の内を、本作の感想としてなら、交わし合える気がする。

岡田 育

おかだ・いく●文筆家

『金木犀とメテオラ』

安壇美緒 著

2月26日発売・単行本

本体1,700円+税

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