[本を読む]
悩み多き生き物だけれど
二〇一九年一月に刊行された『海より深く』の続編である。前作で大学四年生だった主人公の佐藤
そんな中、刑事の瀬戸遼平が病院に現れ、真志歩はある患者に近づくことになる。二十四歳の和田
主人公の前に謎が置かれ、あとはもう手練の筆致で“炎より熱い世界”へとぐいぐい引き込まれる。小塚が営む雑貨店を訪ねる一方、真志歩は友人の
主人公の名前に、著者の「人」に対する思いを感じる。真っすぐに志して歩んでほしい。また、タイトルからしてミステリアスだ。海より深い、に続いて、炎より熱いものとはなんだろうか。ストーリーを通して分かってくる。
手に余るほど奥深い感情を抱える生き物は、人間だけである。だからこその希望をスリリングに問いかける。主要人物があらためて登場し、推進力を増してシリーズが動いている。本作から読んでも大丈夫だが前作もあわせて読んでもらいたい、優れた長編ミステリーだ。
青木千恵
あおき・ちえ●フリーライター、書評家