[特集]
集英社新書創刊20周年記念
集英社の〈知の水先案内人〉として、文化、芸術、政治、経済と幅広いジャンルを網羅する集英社新書が、2019年11月、創刊20周年を迎えました。そこで今号では、集英社新書でおなじみの著者の方々にご登場いただき、集英社新書や自身の著作への思いを語っていただきながら、その歴史を振り返ります。
集英社新書20周年おめでとうございます。伺ったところでは、僕は共著やアンソロジーを併せるとこの新書の10冊にかかわっているんだそうです。なんと。いつの間に。
最初の仕事は尾田栄一郎さんの国民マンガ『ONE PIECE』から「名言」だけを集めた『ONE PIECE STRONG WORDS』に付した解説でした。新書編集部の伊藤直樹さんが、僕がどこかに書いた『ONE PIECE』論を面白がってくれて、少し長いものを書いて欲しいと頼まれたので快諾。
大部分はバリ島に数日遊びに行ったときに書きました。泳いで、プールサイドでピニャコラーダ飲んで、昼寝の後に、クーラーの効き過ぎた部屋でiPadにぱたぱたと原稿を打ち込んでいました。そのときの熱帯の湿度と鳥の声を今ありありと思い出します。夕方まで原稿を書いてから、海辺のレストランに出かけて、白ワインで魚料理を食べて……という愉悦の時間の中に位置づけられたせいで、「集英社新書の仕事は楽しい」という予断が刷り込まれたみたいです。
内田 樹
(うちだ・たつる)●思想家、武道家