[本を読む]
思考を変換させる言葉に心躍らせて
「気の持ちよう」とはよく言ったもので、仕事でも遊びでも、モチベーションが高い時ほど結果が伴うことが多い。だが、常にモチベーションが高い人、または自身でスイッチを入れられる人がどれほどいるのか、周囲を具体的に想像してみても、なかなかいないことに気づく。一部例外は、いわゆる〝成功者〞と呼ばれるビジネスマンたちだ。彼らは共通して自分をその気にさせる・自分を鼓舞することに長(た)けている。そして自分が成功した場面を思い描く想像力に富んでいる。
本書が主なターゲットとしている40代~50代の多くは、家庭があり、住宅などのローンを抱えている場合が多い。言い換えれば、人生のキャリアを積んできたからこその〝責任〞を有している。だからこそ現状の幸せを維持することは最低限のラインであり、まことしやかに語られる儲け話の類には(興味があっても)おいそれと手は出せない。そんな彼らにとって本書のタイトルがどれだけ〝刺さる〞のかは想像に難くないだろう。
本書はまず、収入が月50万円増えた場合の生活を想像させるところから始まる。月末に家族で高級旅館を楽しむ、ローンの返済を繰り上げる、両親の老後施設の部屋をランクアップする……。あまりにリアルで、けれども夢のある話だ。そこから、各人の人生キャリアで積み上げてきたストロングポイントを生かすことにこだわった〝自分ビジネス〞の考え方を説いていく。面白いのは「自分の過去にお宝は眠る」「まずは1円を得ることに、こだわれ!」「事業計画書など不要」「(ビジネスのコンセプトは)100%新しいものを考えてはいけない」などなど、読み手に寄り添い、かと思えば語気を荒らげ、時に反語的に問いかけ、思考を変換させていく言葉の数々だ。読み進めていくと、著者に鼓舞され、夢が叶ったシーンを思い描いている自分がいるだろう。
実は著者には我々のWEBサイト「LEON.JP」にて「年収1億円を叶える思考術」を連載していただいている。一見、荒唐無稽とも思える〝1億円〞という数字に対し、これまた十八番(おはこ)である思考変換の術でもって、リアルを付与していく。興味のある方は本書と合わせてぜひご一読いただきたい。
石井 洋
いしい・ひろし●「LEON」兼「LEON.JP」編集長