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人気作家7人が『こち亀』をノベライズした『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』が発売されます。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の週刊少年ジャンプ連載30周年記念(’06年)と「社団法人日本推理作家協会」設立60周年(’07年)がジョイントして実現した企画で、協会に所属する7人の作家――大沢在昌さん、石田衣良さん、今野敏さん、柴田よしきさん、京極夏彦さん、逢坂剛さん、東野圭吾さんが『こち亀』のノベライズに挑戦しています。 この前代未聞のアンソロジー刊行にあたり、大沢在昌さんのインタビュー、石田衣良さんはじめ6人の執筆者からのメッセージ、そして原作者秋本治さんから各作品への感想をお届けします。 ――まずは、日本推理作家協会理事長・大沢在昌として、今回の『小説 こちら葛飾区亀有公園前派出所』がいかにして実現したかをお聞きしたいのですが。 大沢 一にも二にもタイミングが良かった、ということです。この企画を打診された翌日がちょうど協会の理事会だったんですね。そこに参集したメンバーに、作家として『こち亀』の小説化に興味があるか、参加してもらえれば協会の財政にも寄与することになるがどうだろうか、と訊ねた結果、8人(作家7人、評論家1人)の理事から参加の意思表明をもらえました。まあ、実際のところ、早めに集まったメンバーで「やろう」という結論が出たので、遅れて現れた人には、私が「『こち亀』知ってます?」と聞いて、「知っている」と答えたら、「じゃあ、執筆してくださいよ」と、やや強引な説得をしたような、気もしますが(笑)。とはいえ、ほぼ全員が「おもしろそうですね」とふたつ返事で引き受けてくれました。あれこれ悩んで紆余曲折する時間がなかったのがよかったんでしょう。まさしく、とんとん拍子で話が決まりました。しかも、単行本にまとまる今年は、推理作家協会の設立60周年にあたっていたのも幸いでした。 ――これほど豪華なメンバーがそろったのは、まさに驚異です。 大沢 全員が「おもしろがって」書いてくれたという気がします。推理作家というのはエンターテイナーですから、全員、己の腕前のみせどころだ、と気合が入っているのが見えました。こうした「ひとつのテーマを与えられて書く」という企画は、作家としての個性や力量が試されるわけですから、他のメンバーに負けるわけにはいかん、と自分の持ち味を出して、チャレンジするわけです。結果、7本それぞれに味わいが異なる、バラエティに富んだアンソロジーになったと思います。私も、週刊プレイボーイで連載が始まってからは、毎週、雑誌が届くのを楽しみにして読んでいました。 ――次は、作家・大沢在昌への質問です。連載のトップバッターを務められたわけですが、いかがでしたか。 大沢 言い出した手前、私が最初に原稿を入れなければならないだろうとは思っていたんだけど、実際は私より先に入れた人がいて、少し焦りました(笑)。『こち亀』は自分が読者であった時間が長いだけに最初は悩んだんです。両津勘吉という強烈なキャラクターに引っ張られすぎると小説じゃなくなってしまいそうで。しかし、考えていくうちに、自分は小説家であって、小説を書くことを依頼されたんだ、漫画を文字にしろと言われたのでは決してない、と悟って、頭の中から一度漫画を追い出してしまうことにしました。そこで、どう書くかという方向性が見えてきましたね。 |
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(一部抜粋) |
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