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■マンガの楽しみ、小説の楽しみ ――『DEATH NOTE(デスノート)』は西尾さんにとって、初めての「ノベライズ」ですが、オリジナル小説を書かれるときと一番異なる部分は何でしたか? 西尾 僕の場合、オリジナル小説を書くときに一番労力を割くのは、「登場人物のキャラクターを立てる」という作業なんですね。ですが、今回の『DEATH NOTE』のように、原作があると、主要なキャラクターは、既に“立っている”わけです。だから、キャラクター造形に苦労せずにすむ。そのぶん、それ以外の作業に力を注げる、というメリットはありました。 結果として、仕上がった小説『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』を見ると、僕の今までの小説とは違う味わいを持つ作品になった、と思います。 ――「ノベライズ」をされるうえで、小説とマンガの表現法の違いは意識されましたか? 西尾 それは、当然。特に今回書いてみて、絵で見せられるということがマンガの非常な強みだとあらためて痛感しました。つまり、原作のセリフをそのまま抜き出して、地の文で描写を書き足していくという方法で小説を書くと、原作とはまるで違うものになってしまう。大きなコマで迫力ある絵で、どどんと見せるインパクトは小説にはないですから。そこはマンガにかなわない。 だから、『DEATH NOTE』のノベライズの話をいただいたときに、「原作をなぞるようなノベライズにはしないでほしい。それ以外だったら何をしてもいい」と言ってもらえたのはありがたかったです。マンガを小説化するにあたって、「小説でしか表現できないようなことをしてほしい」という要望でもあるわけですから。おかげで、どどんと大ゴマで見せられない代わりに別のところでちゃんと持ち味を活かそう、小説ならではの醍醐味を読者に味わっていただこう、という方向性が見えました。 ノベライズは、本編のおまけじゃよくないという考えがそもそもこの作品の根幹にありましてね。これまで世間的には、ノベライズ作品とはメディアミックスの一環であり、原作の派生作品であるという見方が主流だったと思うんです。 今回僕がやろうとしたのは、そうじゃない可能性もあるという提言です。 言葉だけで伝えるのと、絵と合体させて伝えるのとでは、全然違うから。小説にはマンガとは違う楽しみがあるということを知ってもらえたらいいな、と思います。 ――西尾さんは、「週刊少年ジャンプ」の愛読者で『DEATH NOTE』以外にも、『ジョジョの奇妙な冒険』のフリークだともうかがっています。色々な作品の中で『ジョジョ』について書かれていますし、荒木飛呂彦先生と対談もされていますよね。 西尾 元々マンガが好きなんですよね。小学生の頃は、「ジャンプ」で『ジョジョ』の第3部・第4部あたりを読んでいた世代です。他には『ドラゴンボール』だったり、『スラムダンク』だったり、『幽☆遊☆白書』が連載されていた時期ですね。第1部・第2部連載時のことは全く知らないのでコミックス派でした。 『ドラゴンボール』も連載序盤をリアルタイムでは知りません。遅れてコミックスで追って読んでいました。なので、たまに「ジャンプ」を読むと「誰、この髪の毛逆立った黄金の戦士は!? こいつと戦っている丸くてフリーザと呼ばれてるヤツは誰だ!?」という状態になる(笑)。僕がコミックスで読んで知っているフリーザはもっと違うキャラだったから。 我ながらびっくりするのは、僕の本棚におけるマンガと小説の割合ですよ。99対1くらいじゃないでしょうか。この間、ちょっと本が増えてきたなと思って、店に売っていた一番巨大な本棚を買ってきて整理していたら、マンガで本棚の全段が埋まっちゃいました(笑)。 |
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(一部抜粋) |
【西尾維新さんの本】
単行本 集英社刊 8月1日発売 定価:1,365円(税込) |
プロフィール
1981年生まれ。 『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』で第23回メフィスト賞を受賞しデビュー。「戯言シリーズ」で人気を博す。 |
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